【解説】

デンマーク発新世代のサイバーパンク・ムービー


  北欧デンマークから、80年代の傑作『ブレ−ドランナー』を彷佛させる次世代のサイバーパンク・ムービーが出現した。サスペンスフルなストーリーと、デジタル画像をふんだんに盛り込んだ斬新な映像で魅せる作品、それが『WEBMASTER』だ。

  近未来テクノポリス。卓越した知能と創造力を備えたシステム・エンジニア、JB。彼はその腕を買われ、闇の権力者が運営するコンピュータ・ドメインの管理を任されていた。現実とオンラインとの心地よい二重生活。だが、そんな安息は正体不明のハッカーの出現によって、もろくも崩れさっていく。汚職の嫌疑を晴らすべく、真犯人を暴き出し、心臓停止の時限装置を除去できるのか?
  刻々とタイムリミットが迫るなか、罠に落ちたJBの執念の追跡は意外な人間関係をあぶり出していくのだった。


  コンピュータ・アニメーションのように造型されたテクノポリスを舞台に、テンポの速いゲーム性のあるストーリー展開、個性的でエネルギッシュな登場人物の設定、仕上げに1年以上を要したというデジタル画像をふんだんに盛り込んだ映像…。
  全く観客を飽きさせない、独自の世界を作り上げたのはトーマス・ボーシュ・ニールセン。これが長編初監督作品である。アメリカとフランスで、3DアニメーションとSFXなどの映像を学んだ彼は、アニメーション製作から映画界に入り、ミュージックビデオやCMなど多くの作品を手掛ける傍ら、小説も執筆して多くの若者に支持されている多才の持ち主である。

   そしてJBを演じるラ−ス・ボムは、本国デンマークでは有名なテレビや舞台の俳優で、王立デンマーク演劇学校で演技を学んだ実力派。代表作には日本でも99年公開された『プッシャー』がある。


   ニ−ルセン監督の出身国・デンマークは、いま映画界の熱い注目が注がれている国だ。
彼はデンマーク映画協会(Danish Film Institute)の出資を得て本作を完成させ、母国で映画監督として華々しいデビューを飾った。
デンマークといえば、本年のカンヌ国際映画祭で見事パルムド−ルを獲得した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラ−ス・フォン・トリアー監督(『奇跡の海』)や、1995年に結成された〈ドグマ95〉(独自の10カ条の制約を設け映画製作を実践している集団)で作られた『セレブレーション』『ミフネ』が近年日本でも公開されて有名だが、他にも斬新な映像感覚を持った新鋭監督を次々と輩出している。

  例えばアナス・ロノウ・クラーロン監督は、1971年生まれの弱冠28歳。彼の新感覚サスペンス『ポゼスト 狂血』は、2000年日本でも公開され話題となった。
『WEBMASTER』のニ−ルセン監督も1963年生まれ。母国での成功のみならず、99年のカンヌ映画祭で上映された際には映画人の話題をさらい、その後各国の映画祭に出品されて数々の賞を受賞し絶賛された。今後、デンマークの次世代監督たちが各メディアの話題を独占していくのは間違いない。

デンマーク映画ブレイクの兆しを感じられるいま、見逃せない作品である。



◆映画祭◆ 


1999年ブリュッセル国際ファンタジー映画祭 特別賞(トーマス・ボーシュ・ニールセン監督)
【※米メジャー作品『スタートレック』『ダークシティ』『カラー・オブ・ハート』『ラグラッツ』を抜いての受賞】
1999年ロベルト映画祭(デンマーク) 最優秀美術賞 
1999年デンマークアカデミー賞
【※6部門ノミネート】